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【フレキシブル基板にチャレンジ!】新3Dプリンター導入編[3]:湿気対策

【フレキシブル基板にチャレンジ】シリーズ とは
エレファンテック技術ブログ新企画、東工大の学生が初めてフレキシブル基板を使って、実際に電子工作する試行錯誤のレポートをお届けします。
新3Dプリンター編をよろしくお願いします!

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ご挨拶

高橋です。久しぶりに3Dプリンターネタ。

 

湿気inフィラメント

FDM方式の3Dプリンターで使用されるフィラメントの種類は様々ですが、とりあえずこれ使っとけっていうものにPLAとABSがあります。

 

(軽く解説:PLAは印刷が失敗しにくく硬い素材で、ABSは柔軟で割れにくい素材という感じ。詳しくはググるとたくさん出てくるので割愛)

このうち特にPLAで顕著なのですが、吸湿という問題があります。フィラメントが水蒸気を吸ってしまうと加熱した際に水蒸気が発生し、さらに加水分解を起こすため溶融温度が下がり流動性が上がってしまいます。こうなると、発生した水蒸気のガス圧によりフィラメントの押し出しを止めてもフィラメントが漏れ続けてしまうようになり、樹脂が滅茶苦茶に糸を引きます。

参考リンク↓

そして、ちょっと前まで我々のプリンタで使用していた材料がCoPAという耐熱性の高いフィラメント(リンクはこちら)なのですが、これがまた非常に湿気に弱いです。

△中期。糸引きがやばくてむしろ綿。

△末期。水蒸気の気泡が顕現。強烈にキモい。写真では伝わりにくいが、出てきた先からボコボコと泡立っていくのはキモ過ぎて吐き気を催す

 

こんなに湿気に弱いのにわざわざCoPAを採用したのは、フレキシブル基板で立体成形をするプロジェクトがあったため、耐熱性を持った型を作るのに必要だったからです。吸湿さえしていなければ、印刷しやすく強度もあり耐熱性も備えているという文句なしの性能を発揮するのですが…

 

とにかく、ここまで糸を引くとサポート材(空中の構造物を支えるための、最終的に外して捨てる部分)が全く分離できなくなったりするので、見た目の問題には収まらなくなってきます。

 

乾燥キープのためのよくある手

3Dプリンター/フィラメントメーカーはその辺よくわかっているので、よくわかっていない相手にいろいろ乾燥のためのグッズを勧めてきます。

PolyBox™ Edition II

 

しかし、これは乾燥キープにはいいんですけど、もう吸湿してしまったフィラメントに対しては無力です。一度吸湿してしまったPLAフィラメントは簡単に乾燥しないらしく、水分を吐き出させるためには加熱するしかないようです。

具体的には熱風を長時間当て続けるとかいう地味な方法となり、

こういうのもあるわけです。

 

ただ、熱風を当て続けるだけならもう少し安くできるだろうということで、ドライフードメーカーに入れたり、布団乾燥機をカメラのレンズケースに直結させるなんて方法がネット上に転がっていました。

 

やってみた


下の箱に湿気たフィラメントが入っています。

酵素を溶かして印刷することが多い、PBS溶液の吐出画像

とりあえずみずみずしいPLAを4時間ほど乾燥。

 

良い感じに改善されていますね。多少漏れてるところもありますけどまあモックアップなので許容範囲とします…

それならこれも治ってるだろうと、同時に乾燥させていたCoPAをジャックイン。

 

オ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!

 

 

覆水盆に返らず

Googleは俺に何も言ってはくれない…

とりあえずPLAは(ある程度)生き返ったのでそれでよしとしたいんですが、CoPA結構高かったんですよね。

というかそもそもCoPAは湿度20%以下にキープしろって言われてるのにそれをさらに乾燥って無理なのでは? 読者の皆さんは湿度20%キープ頑張って下さい。金が無限にあるなら湿気た先から捨てていくのもあり

でもまあ、いつまでもナイロンのことでうじうじしてるのもあれなので、とりあえずナイロンは封印して頑張っていきましょう…ということで現在はABSを使っています。何でかというとABSは吸湿の影響が少ないからです!!!正直毎回乾燥機にぶち込んで数時間待つのは面倒

 

今回の記事で紹介したのはあくまで復活法で、PolyBoxのように乾燥をキープしたままフィラメントを引き出せるようなハコは作ってないです。PLAを継続的に使うにはそういうグッズも必要なので、いずれそれも安く作ってみます。それまではとりあえずABSを使って、PLAは乾燥剤と共に密閉したハコに入れておこうかと…

いざ使いたくなったら4時間前から乾燥しておけばいいわけではありますしね。

 

小ネタ:ノズル詰まり対策(次回へ向けて)

個人だとおカネ的に厳しい手段ですが、団体で所有する場合はノズルのストックを複数持っておくとノズル詰まったかな?という時に気軽に交換出来て便利です。

基本的にノズル周りが新品なら仕上がりも新品のそれになるので、調子悪いけどベッドの高さとかいじってもダメだあという時は即交換がいいでしょう。

で、詰まったノズルが溜まってきたらまとめてアセトンのプールにぶち込んで清掃。複数一気にやった方が効率的ですしね。清掃してもどうにも調子が良くならない場合も、動かないプリンターが鎮座しているより少しお金払って新品のノズルにした方がよかった、なんてことも。

 

まあつまり、ノズルは消耗品です!!!(この辺は戦争の火種になるので次回)

 

まとめ

・ノズルは大丈夫なのにうまく行かないときは乾燥を試してみよう

・お高いフィラメントを買う時は先人の忠告によく耳を傾けましょう

・CoPAは湿ったら終わり

 

次回

次回はノズル詰まりが起きた時の修理と点検の方法について話していこうと思います。