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フレキシブル基板 P-Flex®️ 設計のコツ「パターン設計編」

普通のプリント基板(リジッド基板)を設計したことがある人にとっても、フレキシブル基板(FPC)の設計は未知の領域です。フレキシブル基板に特有の耐久性の問題があるからです。より安全なフレキシブル基板はどのように設計すればいいのでしょうか。

基板のレイヤー(レイヤーの解説は:下記)ごとにコツがありますが、今回の記事では「パターン編」と題して、特にパターンの配線のコツを紹介します。

パターン設計のコツ

今回紹介するコツは以下の4つです。1〜3は主に耐屈曲性* を高めるためのよく知られているコツです。一方、4はP-Flex®に特有なコツで、製造方法の違いに由来するものです。

  1. コーナーを曲線で設計
  2. 角を丸める(ティアドロップ、Fillet)
  3. 屈曲部はシンプルに
  4. ベタ面には注意

* 下の図のような曲げを「屈曲」と呼び、屈曲に対する耐久性のことを「耐屈曲性」と呼びます。曲げて使われることが多いフレキシブル基板にとって、耐屈曲性は非常に重要な特性です。

パターン設計のコツ

1. コーナーを曲線で設計する

パターンから見て凹方向に曲がった部分が含まれると、そこからパターンが割れやすくなります。そのため、配線を曲げる場合は必ずRをつけて曲線的に曲げます。

下の図の悪い例のようなパターンは、角が内側から裂けやすくなります。

コーナーを曲線で設計する

2. 角を丸める(ティアドロップ、Fillet)

ランド(部品を接続するための矩形や円形のパターン部)の角も同様に丸くする必要があります。涙のような形なのでティアドロップ、また英語圏では単にFilletと呼ばれることもあります。

角を丸める(ティアドロップ、Fillet)角を丸める(ティアドロップ、Fillet)

最近のCADではティアドロップをまとめて付加する機能もあって非常に便利ですが、残念ながら無料のCAD等でまだ手作業でつける場合もあります。

ティアドロップが簡単に作れない場合は、矩形の頂点から配線を引き出す方法もあります。この方法でも角は存在してしまいますが、角を鈍角にすることで簡単に耐久性を高めようというアイデアです。

ティアドロップが簡単に作れない場合
またティアドロップは、ビアホール(両面基板の上下面を接続するために開ける貫通穴)の位置が配線方向にずれた場合に、配線とランドが絶縁しにくくする目的もあります。

2017-10-31 設計のコツ「パターン設計編」【はじめようフレキシブル基板】

3. 屈曲部はシンプルに

繰り返しになりますが、屈曲部はフレキシブル基板にとって一番の弱点になる場所です。下の3点を守ることで屈曲部を可能な限りシンプルにすることで耐屈曲性を向上できます。

  • 部品を配置しない
  • 線幅を変更しない
  • 線を曲げない

これらは少なくとも屈曲部から1mm以上は離しましょう。

屈曲部はシンプルに

4. ベタ面には注意

ベタ面(大面積の塗りつぶし)はノイズ対策や寸法安定性の向上のためによく使われます。P-Flex®️でもベタ面を使うことはできるのですが、既存のフレキシブル基板とは製造方法が全く異なるため(参考:フレキシブル基板の製造方法の違い)銅膜厚にムラが出ることがあります。

しかし規定の銅膜厚を満たした製品しか出荷しておらず、またノイズ対策や寸法安定性の向上には多少のムラは特に問題にならないので、見た目が気にならなければ問題なくご利用いただけます。

まとめ

以上のコツを満たすようにパターンを設計することで、リジッド基板の経験しかない人もフレキシブル基板を安全に設計できるようになると思います。パターン以外のレイヤーにもコツがありますので、次回は「レジスト・シンボル・外形編」のコツを紹介します。

また記事に出てきた関連リンクもまとめておきます。

(追記)「レジスト・シンボル・外形編」書きました!こちらからお読みください。

参考文献

フレキシブル基板製造業者の沖電線の資料と基板情報まとめサイトのアットマークエレに日本語の情報がまとまっていて非常に便利です。

ランドの設計は、アメリカの業界団体 IPC(IPC – Association Connecting Electronics Industries)が定めたランドの設計の標準にも記載されています。

  • IPC, “IPC-7351: Generic Requirements for Surface Mount Design and Land Pattern Standard”

その他、海外の製造業者がまとめている情報も日本語の資料とは異なる情報があって有益です。