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4DFF発表報告「家庭用プリンターに対するUVインク硬化用LEDランプ搭載の試み」

2020年10月15、16日に開催された Conference on 4D and Functional Fabrication 2020(4DFF)にて、エレファンテックは3件の発表を行いました。4DFFは 4D&ファンクショナル・ファブリケーションであり、3Dプリンティングによるファブリケーション(ものづくり)の未来について考える会議と位置づけられています。

エレファンテックAMCはAM技術の発展を目指しているので、毎年このコミュニティーでの情報交換を進めております。

今回は、高橋が発表した内容についての概要と聴講者からの反応を紹介します。

SC-09「家庭用プリンターに対するUVインク硬化用LEDランプ搭載の試み」

 本検討では、家庭用インクジェットプリンターに多少の改造を施してUV硬化インクを充填・吐出・硬化する実験を行い報告しました。既存のUVプリンターの問題点である導入コストやサイズといった問題を家庭用プリンターの改造という手段で解決することを目論み、実験の結果浮かび上がった問題点をまとめました。改造に際しては、部品類は大手通販サイトなどで購入が可能であるような入手性の良いものを選定し、専門的な知識や設備が無くても可能な範囲での改造を行いました。

 実験結果としては、UVインクの吐出はスムーズに行うことが出来たものの、UV光の照射量の不足により十分な一次硬化を行うことが出来ないことが判明しました。また、UVインクの充填から時間が経つとインク流路のシーリングが浸食されてインク漏れが発生することも同時に判明しました。
 UV光照射量の問題については、UVLEDや冷却機構の搭載スペースや重量の問題を考慮するとこれ以上搭載数を増やすことは現実的ではなく、また高性能なUVLEDを使うと価格が跳ね上がってしまう事から改善が難しいと考えられました。既存のUVプリンターでは照射時間を長くとることで解決しているものが多いのですが、家庭用プリンターの改造という方法では印刷時間のコントロールがあまりできないという点も障害になります。
 インク漏れについては、シーリングの材質とインクの相性が悪いという問題に帰着します。プリンターのパーツを分解してシーリング材を入れ替えるという方法は専門性・価格の両面で問題があるため、今後家庭用プリンターの改造を追求していくならば様々な種類のUVインクを使って試験を繰り返す必要があります。また、今回使用したプリンターとインクの場合では充填から2~3日は漏れが発生しなかったため、使用期間がその程度の短期間でも問題無い場合は浸食が起きないうちに使い終えたり、浸食が起きたらその都度新しいプリンターにUV印刷機構を移植するという方法もあります。

改造を施したプリンター改造を施したプリンター
印刷中の様子印刷中の様子

質疑の概要をお伝えします。

 聴講者の注目点は、まずUVプリンターとしてはイニシャルコストが安く済むという事、また既存のUVプリンタと比較して劣る点が複数ある事などがありました。
 劣る点としては、プリンターを頻繁に交換する場合のランニングコストが非常に大きいこと、硬化が不十分になること以外にも、今回の改造に使用したプリンターは単色タイプのインクジェットプリンタであるためフルカラー印刷が出来ない事などがありました。
 しかし、イニシャルコストについてはインクジェットの専門家の方からも高い評価を頂き、このような試み自体が他ではあまり見られないという事も伺いました。寿命が短いことやフルカラー未対応である事などの欠点が解消されたら使ってみたいという意見も複数頂けたため、改造の手順が確立されれば需要があるという印象を受けました。