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【フレキシブル基板にチャレンジ!】ロボットアーム編[4]:基板曲げ

【フレキシブル基板にチャレンジ】シリーズ とは
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エレファンテック技術ブログ新企画、東工大の学生が初めてフレキシブル基板を使って、実際に電子工作する試行錯誤のレポートをお届けします。
電卓編の次のシリーズとして新たにロボットアーム編のスタートです。引き続きよろしくお願いします!
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挨拶

こんにちは。高橋です。久しぶりに基板関係の記事を書きます。
今回は、仕様には気を付けましょうという話です。

基板を曲げるのだ

今回使う薄型P-Flex®(ベース:50μmPETフィルム)における耐屈曲性の参考データとして、屈曲半径R=5mmでの2000万回の屈曲試験を経て動作試験に合格したとの旨が記されています。(参考:フレキシブル基板 P-Flex🄬製造仕様)

また、同ページによると最小曲げ半径の参考データとしてR=0.5mmという値もあります。ただこれは1回折り目を付ける際のデータであり、この半径で何回も曲げられるというわけではないことに留意してください。

…まあよくわかんないけど行けるっしょ!
何も考えず基板を型に嵌め、ヒートガンで加熱して冷ませばこの通り。

社員のTさん「ちょっとこれはR小さすぎるかな」
ぼく「ですよね」

バネというものは曲げによって伸び縮みするものでして(当然)、ここまできつい曲げをすると断線の危機もあります。
ただ、あまりRが大きいと十分な伸び率を確保できないという問題もあります。

どうしたものかと唸っていたら、社員のNさんから一言。

「MIT試験のデータはまだ取ってないから、ちょっと見世物にはしないほうが良いかもね」

……???

 

MIT試験 #とは

JIS P 8115:2001 紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法
かっこいい

簡単に言うと、薄いモノについて同じ箇所を繰り返し曲げ伸ばしして耐性を測る試験の事です。
JISの公式の資料は此処には載せられないので、簡単な解説図を。

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△最近Fusion360を使い始めました

これがMIT試験機の大まかな概要図です。円盤のようなものが折り曲げクランプと呼ばれるもので、錘を用いて試験片にテンションをかけた上でこれを回転させることで試験片を折り曲げます。
この図は正確な構造を示しているわけではないですが許して

 

逆に、普通の曲げ試験とはこういうものです。


この図の上部にあるオレンジのところを左右に動かして耐久力を測るのです。
(参考:http://www.yuasa-system.jp/site/files/kogatatakujyo_v4.0.pdf)

折り曲げと言ったら何となくMIT試験のような試験をするのかなあと思うもの(?)ですが、では何故このような試験法をするのか。
それは、フレキの用途としてHDDやCDドライブなどが多くある事が要因です。

(参照 : 番外編:ノートPC分解号 その2)

実は、この折り返し試験の動きはディスクドライブでのFPCの動きそのものなのです!!!


 

仕様変更

データが無いならしょうがない、と仕様を変更。
全関節をヒンジ的な仕様(参照:機体設計-ちょっとだけフレキの話)へと統一し、それに従いアームやアームに載せる基板を大幅に設計変更。
電卓の時と同じく、基板設計リベンジ編の開幕が決定しました。拍手!!!

ちなみに、MIT試験については現在準備中で、データが必要になり次第測定する予定だとのことです。

 

まとめ

データとか根拠が無いまま突き進むという個人製作的な心構えはそろそろどうにかせねば

▽試作した型の残骸