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【フレキシブル基板にチャレンジ!】曲がる有機EL編:電圧保護回路を作ろう

【フレキシブル基板にチャレンジ】シリーズ とは
エレファンテック技術ブログ新企画、東工大の学生が初めてフレキシブル基板を使って、実際に電子工作する試行錯誤のレポートをお届けしています。

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ご挨拶

こんにちは、高橋です。

今回は単発記事として、フレキシブル基板で電圧保護回路を作ってみます。

 

曲がる有機ELとは

こちら、コニカミノルタさんの製品であるフレキシブル有機ELです。

普通の砲弾型LEDやチップLEDを光らせると点光源で結構眩しいものですが、このような有機ELは面で均一に光ります。なので目に優しい!しかもこの子は曲がるので実装場所を選ばないんです! あとなんかぼんやり光っているのが雰囲気良いのでインテリアに使うととても良さそう  ※個人の感想です

 

ですが、これをいろんな人たちが試しに使ってみようとする上で少し問題があるそうです。というのも、とりあえずこのパネルを電源装置に直結して光らせ、もっと明るく光るのかな?みたいな感じで電圧上げてお陀仏することが多いのだとか。そしてこれ1枚が地味にウン百円。(データシートは上のリンクの一番下にあります)

だったら、電圧にリミットをかけるような回路をフレキシブル基板で作れば、フレキシブル有機ELの”薄くて曲がる”という利点を損なわないまま安全に使えるのでは?という話になりました。

 

つくってみた

電圧制限にはツェナーダイオードを、電流制限には定電流源ICを使います。

ツェナーダイオードというのはちょっと特殊なダイオードで、普通のダイオードと逆方向に電圧をかけると一定以上の電圧がかかると電気が流れるようになります。それを利用して、一定以上の電圧がかかったら電気を逃がすような働きをさせることで電子部品を保護しようということなのです。詳しくは記事終わりに参考リンクを貼ったのでそちらなどで。

定電流源ICは名前の通りの働きをするもので、使いたい部品に直列につなぐだけで電流量を制限してくれます。LEDの保護に使われることが多いです。かかる電圧が一定の場合なら抵抗でも大丈夫なのですが、その場合でも抵抗値の計算をいちいちしなくてもいいので楽です。

部品一覧:

ツェナーダイオード  ZMM-LL34 (ツェナー電圧3.3V)

http://www.aitendo.com/product/11463

定電流源IC  NSI45015WT1G (15mA)

http://www.aitendo.com/product/12602

今回使うフレキシブル有機ELは小さい方なので定格電流は12mAです。ちょっとオーバーしてるように見えますが、データシートを見るとこの定電流源ICは3.3V当たりの電圧ではだいたい12mA付近までしか流れないので大丈夫です。心の目で見てください

(ICのデータシートはこちら、3ページ左上のグラフより)

もし何かの拍子にツェナーダイオードが吹き飛んだら普通に15mAとか流れるんでしょうけど、その時は電圧で有機ELがやられるので大丈夫です(?)

 

抵抗値については、最低電圧(電圧3.3V、電流12mAを流すための接続する電源電圧) と対応させると

最低電圧5V:100Ω

最低電圧10V:400Ω

という感じです。最大電圧については特に制限は無いです(ツェナーダイオードや抵抗の定格電力を無視した場合)。今回はとりあえず有機ELを守れればいいやということで無視して、5V駆動が魅力的に感じたのでその辺にあった100Ω・0.1Wのチップ抵抗を乗せました。

この場合、定格電力を超えない範囲での最大電圧は6.32Vでした。チップ抵抗の定格電力が思ったよりキビシイけど、壊れるのは抵抗であって有機ELパネルの方じゃないから大丈夫。もし抵抗も基板も守りたいなら、もっと定格電力の大きい抵抗を乗せたり加熱対策したりしましょう。定格1Wの抵抗を選べば10V以上でも耐えます。

とりあえず大丈夫そうですね!

 

ちなみに調子に乗って電圧上げまくったら抵抗が過熱してポロっと焼け落ちました…それでも有機ELパネル自体は大丈夫だったのでとりあえずホッとしました。

 

Z-axis

作ったはいいけど、これ有機ELパネルと回路どうくっつけるのがいいんだろう?という問題。というのも、この有機ELパネルの端子部は銅メッキとかではなく銀の蒸着で作っているので普通にはんだ付けすることはできません。というかそもそもはんだ付けの温度に耐えない。そして有機ELパネルと回路はくっついてセットになっていた方が取り回しが良いのでワニ口クリップで繋げるのも微妙。

 

当初僕は ①導電性接着剤 ②クリップ的なもので押さえつける 、の二つを思い浮かべていたんですが、接着剤は取れなくなるので制限基板が逝った時に多少面倒になります。クリップを使うにしても何か柔らかいものをクリップと基板の間に挟みたいので、シリコンのシートで挟んでやってみました。

すると抵抗あたりの発熱がパターンを通して伝わったのか、シリコンが融けて基板に癒着!!剥がれなくてちょっと焦りました…いやまあ例によって調子乗って電圧上げすぎたんですけど。とにかくこっちも逝ったときに面倒なので接着剤とあまり変わらない。

 

というかクリップなんて使ってたらわざわざp-Flex使った意味無いし、なんか良い策無いですかね?と聞いたところ教えてもらったのがこの魔法のテープです。

これ、厚さ方向にのみ導通する両面テープなんです! (Z-axisという名前はきっとこのことを指してる)

なので例えば今回の場合、基板の有機EL用端子それぞれの大きさにテープを切って貼る…のではなく、全体に貼ってしまっても大丈夫なんです。端子の面積が小さくてもこれなら貼るのが簡単ですね! 何なら表面実装のマイコンの実装にも使えたりして…?

△左が貼る前の基板、右がテープを貼った基板(剥離紙つき)。端子部の形ぴったりに合わせなくても大丈夫なのは地味にありがたい

△貼った様子。薄くて良い。

ただこれを使う場合、100mAが目安の耐電流になっているので気を付けましょう。今回は15mAとかなのでOK。

でもこれ本当に必要なデータは面積当たりの耐電流なのでは?

 

今回のまとめと感想

・フレキシブルなものはいいぞ(照明・基板共に)

・安全装置の需要は意外と高いのであった

・Z-axisという便利なテープがこの世にはある

 

参考リンク

ツェナーダイオードの使い方について。今回は電流量は少なくていいのでトランジスタ等は使わなかったですが、大体は使うハメになります。

電圧制限回路についてのとてもすごいページ。実はツェナーダイオードは流れる電流量によってツェナー電圧が変動するため、大きい、あるいは変動する負荷を繋ぐ際は定電圧源として望ましい働きをしてくれるわけではありません…なので、もうちょいちゃんとした制限回路が欲しいという方はぜひこのページへ。

 

コニカミノルタさんからコラボ投稿を頂きました。(2020/01/29 追記)
このブログ記事を、なんと!コニカミノルタさんにご紹介頂きました!
ものづくりや技術を通して、いろいろな形で繋がっていけるのはとても楽しいですし嬉しいことですね!本当にありがとうございました!