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AMC 始動(2)

エレファンテック杉本です。

前回の「普段から様々な論文を読むのですが、相変わらず家庭用プリンターをハックして様々なチャレンジをしている研究者の皆さんのチャレンジの中にあるキーワードが目立つことに気づきます。それがバイオセンサーだったのです」という話からの続きです。

そのバイオセンサーの論文たちですが、よく調べてみると、まずすぐに理解できたのが電極をカーボンや銀のペーストで印刷して多くの人は作っているが、インクジェットでそれを作ることができそうだぞということがわかりました。そこでまずはじめたのが電気化学センサー製造サービスです。よく考えると、もちろん金などのペーストやインクを塗ってもいいんですが、弊社はめっきの技術があるので、金めっきなども組み合わせるといろんな価値を提供できるんじゃないかと思ったんです。

バイオセンサー向けの電気化学センサー

ところで、そのバイオセンサー向けの電気化学センサーという言い方をしている金属電極ですが、ものにもよるのですがたいてい3極あります。作用電極、参照電極、対極の3本です。これらの仕組み、特に参照電極の仕組みなんか気になると思いますが詳しい解説は別の記事に譲るとして、この参照電極には銀塩化銀電極というのがよく使われます。この銀塩化銀電極は弊社では銀塩化銀ペーストをシルクスクリーン印刷で塗布することで形成しています。実際、この銀+塩化銀のフィラーが混ざったインクジェット用のインクを探しているのですが、塩化銀の粒子は凝集しやすいみたいで商品としてはまだ扱ったことがありません。もし、読者の皆さんでインクジェット用の銀塩化銀インクをご存じの方、開発中の方はぜひお声がけいただけると嬉しいです。

それで、この金の電極や、銀塩化銀電極を持ってお客さん周りをしたところ、一部のお客さんから、電極もいいんだけど、酵素の方を塗ってほしいよとよく言われるようになりました。下記の検出を担う部分ですね。あ、ちなみに引用している論文は非常に良い、よくまとまった論文なので今後も何度も登場します。

バイオセンサーの仕組み

AMCの設立へ

この酵素をIJで塗ってほしいと言われたのは、酵素ってあんまり熱をかけて乾燥させると失活してしまうので、かなり低温で乾燥させなければいけなくて、複数の酵素を塗らないといけない場合、乾燥プロセスが大変なので、そっちのほうをやれないかというご要望でした。インクジェットは非接触で印刷できるので、任意の場所に複数のインクを、各インクが乾くのを待たずに印刷することができるんです。そこで、なるほど、そういうインクジェットのありがたみもあるのかと思ったものの、弊社は回路を印刷するのが本分の会社、そちらをやらずにうちがやる仕事なのかとちょっと悩みました。でも、弊社の強みは、吐出が非常に難しい銀ナノインクを安定的にインクジェット印刷できるように、インクとヘッドと機材をすり合わせして量産レベルに持ってきたことであるので、言い換えると「難しい材料」をインクジェット印刷できるようにするのが得意な企業なのです。であれば、それが銀ナノインクに限らないだろうと思うようになりました。そもそも弊社の回路事業においても、将来は銀ナノインクから、コストダウンを考えるとCuを使ったインクへとシフトしていく可能性が高く、実験はすでにはじめていました。銀ナノインク以外のインク吐出へと進出するのは、弊社の価値をより多くの社会的需要に役立てさせて頂くチャンスというように気づき、AMCの設立へとつながっていきます。

さて、次回以降は、バイオセンサーの製造においてインクジェットが本当に役に立ちそうなのか、どのような点でよさそうかなどをお伝えしていこうと思います。